川西輝明医師(肝がん検診団 団長 肝臓クリニック札幌 院長)を講師に 『元気で長生き医療講演』函館で開催

肝臓クリニック札幌 川西 輝明 院長
札幌市中央区北11条西15丁目2-1 桑園メディカルプラザ3F TEL 011-708-8080

平成29年5月20日に行われた川西輝明先生による『元気で長生き医療講演』の中から肝臓病についての講演要旨です。


私は肝臓の専門医で、肝臓病の患者さんに最新の治療法と肝臓病は治る病気になってきているということをお話できればと思っています。
肝臓病にはいろんな病気が含まれています。生活習慣が原因で起こるものとしては、脂肪肝がよくいわれますが、生活習慣病以外ではウィルス性肝炎が日本国民の命を奪う病気として非常に重要でした 。
脂肪肝の原因は、食べ過ぎや運動不足、肥満やアルコールで、生活習慣病でよくいわれる類いのものです。私が医者になった当時はウィルス性肝炎で肝がんになる人がたくさんいたので、死ぬ人のいない脂肪肝には構っていられないといわれていました。
でも今はNASHという非アルコール性脂肪肝炎が日本でも増えて いるということが分かって、脂肪肝炎によって肝硬変や肝がんになる人も出て来たことから、学会では盛んに研究するようになっています。
(肝臓クリニック札幌 院長)


 ■『元気で長生き医療講演』

一度は肝炎ウィルス検診を

ウィルス性肝炎については、A、B、C、D、Eとアルファベットで分類していましたが、B型とC型のウィルス性肝炎が慢性肝炎、肝硬変、肝がんを引き起こす、日本では非常に重要な病気です。
肝臓がんは肝炎が持続することで発生することが分かっています。慢性肝炎、肝硬変へと進行するにしたがって、肝臓がんが出来てくるといわれています。
肝臓がん、肝炎の原因となるものを調べていくと、B型やC型のウィルス性肝炎が8割前後を占めています。肝がんの原因を聞くと、大抵の人はアルコールと答えます。でも、統計で飲酒のために肝がんに なる人は、ほとんどいないということは示されています。つまり、B型やC型のウィルス性肝炎を持っているために肝臓がんは出来るという事です。
肝臓がんの原因となる肝炎が、どうして広まったのかという事もいまいち知られていません。輸血で肝炎になるのは、C型肝炎の内の約2割。その他に予防接種の集団接種によって、B型肝炎の人が広がり ました。C型肝炎は薬害肝炎や注射器の消毒が不十分ということで広がった方がたくさんいる。 医療によって半分以上の肝炎の患者さんはうつされてしまったと言うことがわかってきています。ただ、原因として、その注射でうつったということが証明できないので、国はなかなかそれを認めてくれなかった。それで患者さんたちが一所懸命がんばって、肝炎対策基本法という法律をつくらせました。
国の政策の不備によって、肝炎患者さんが広まったことを国に認めさせたのですが、まだ自己負担が必要です。誰もが肝炎になってもおかしくない状況が国民に知らされていない現状です。
そういった意味でも肝炎ウィルス検診を受けましょう。誰が罹っていてもおかしくないのですから、みんなが肝炎ウィルス検診をして血液検査でチェックする必要があるということです。大体100人に 1人は感染しているといわれています。血液検査をしていない人は、1回はこの肝炎ウイルス検診をしてほしいです。
3分の採血で肝がんになる人が8割減るともいわれています。がんの対策で、これほど発生率を下げられる対策はありません。肝がんは確実に減らせるがんのひとつです。 一度は、この検診を受けて大丈夫という事を確認して欲しいです。早いうちに検査をして、肝臓の病気で死なないようにすることが、日本にとって非常に大事なことです。

B型・C型ウィルス性肝炎は飲み薬で治る時代に

肝臓がんを予防するには、炎症が持続しないようにすることが大事です。ウィルス性肝炎は、抗ウィルス療法が有効です。C型肝炎、B型肝炎は飲み薬が中心で、本当に楽な治療で治る時代に変わって来ています。
実際、飲み薬が中心の抗ウィルス療法によって肝臓の外のウィルスが消えていくと同時に肝臓の中もどんどん消えていって、肝臓の働きがよくなっていく。最終的に身体の調子がよくなって元気になる。 これが今の肝臓の治療の現状です。 B型肝炎の治療も、どんどん進歩していて、最近はベムリディ、TAFという薬が出てきました。飲み薬でB型肝炎ウィルスの増殖を抑える。その内にウィルスが血液中か ら消えて、S抗原が陰性化することまで分かって来ています。 このS抗原の陰性化というのはB型肝炎が治ってきた状態を作れるようになってきたということです。これまで罹ったら治らないといわれてい たB型肝炎でも治る人がどんどん出ています。 C型肝炎も何種類も薬が出て、飲み薬を中心とした治療で9割以上の人が治っています。私の病院に通院していた人も9割くらい、100人以上の方が治って 、治った後はがんが出てこないかのチェックだ けでいいので、気持ちを楽に通院してくれています。 この飲み薬はB型肝炎と違って3ヵ月飲むだけで治る薬が中心です。これから先、2ヵ月とか4ヵ月とか、いろんなタイプが出てくるようにしていますけど、どれもが本当に副作用が少なく、治りきってしまう。そういう時代になっています。

今は肝硬変でさえ治る

また、肝硬変の固くなった肝臓を治療する薬も研究されています。北大で使われている薬ですが、週1回の点滴で肝硬変が治ったというお薬が、今研究されています。これも成功すれば、4、5年以内に 出てくると思うですけれども、100%では無いにしても、絶対治らないといわれていた肝硬変さえ治すことのできる時代が、もうすぐ来るんだということを覚えておくだけでも、力になるかと思います。
肝硬変だった患者さんも、ウィルスの薬で治っているという報告もあります。B型肝炎で紫色に線維化していた肝臓が、10年経ったら全然無くなっていて、肝硬変が治ったという報告です。
わたしたち肝臓の専門医も肝硬変は治るわけがないと思っていましたから、この報告は、嘘だと思っていたんです。しかし、どんどん治る人が出てきました。BもCも、ウィルスの治療をちゃんとすると、 肝硬変の人でも治るということが起こる。だから、肝硬変だからとあきらめないで、こういった治療をすることが大事。
一般の内科の先生の中には、まだ知らない人もいます。ですが、肝硬変でさえ今は治る時代になってきたということを覚えておいてください。

◆講演日:2017年5月20日、講演者:院長 川西 輝明 氏


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