全身疾患の要因となる歯周病の怖さ~ 菌質改善と歯科栄養療法など新療法への取組み

医療法人真幸会 ユアデンタルオフィス 髙橋 真人 (まひと) 院長
札幌市北区新琴似2条10丁目1-10 TEL 011-761-3000

歯周病は単に歯を失うというだけでなく、全身疾患の要因ともなりかねない生活習慣病です。歯科医として先進な療法に取り組むユアデンタルオフィスの髙橋真人院長に歯周病の怖さとともに新たに取り組んでいる「バクテリアセラピー」による菌質改善と「歯科栄養療法」についてお聞きしました。
<取材協力>
髙橋真人 氏
(ユアデンタルオフィス 院長)
「メディカルページ札幌版 平成29年冬号」(平成29年11月6日発行)の冊子に掲載された記事です。

歯を失う原因は、4割が歯周病、3割が虫歯。40歳以降は歯周病で歯を失うことが多いといわれています。まず歯周病について教えてください。

 

歯周ポケットと呼ばれる歯と歯茎の境目の溝に歯周病原因菌が入り込むと、免疫反応が起こり炎症が起こります。炎症がひどくなると歯を支えている骨の破壊が進みます。その結果、歯茎が下がり歯の根が露出してグラグラの状態になってしまう。それが歯周病です。

それでは歯への影響しかないのではありませんか。

■髙橋真人院長

以前取材していただいた際にもお話しましたが、歯周病が恐いのは、歯周ポケット内で炎症が進むと骨を破壊するだけではなく、炎症により歯周ポケットの内面にできた潰瘍(傷)から歯周病菌が侵入して全身を回るんです。
細菌が血管内に入ると当然免疫が働いてその細菌は攻撃されますが、その際に細菌の菌体内にある内毒素が放出され、これが血管内や各臓器で炎症を起こすといわれています。
この炎症が動脈硬化、糖尿病、リウマチ、心筋梗塞、脳梗塞などの疾患の発症と関係があることがわかってきました。こういった研究がどんどん進歩し、疾患の部位の組織から歯周病菌由来の物質が検出されていることが報告されています。

そうしたことからも生活習慣病を重要視していらっしゃるのですね。

そうなんです。エビデンス(臨床結果などの科学的根拠。その治療法がよいとされる証拠)がまだ得られていないものもありますが、統計的に関連性が示唆されている以上、無視できないと思っています。

心筋梗塞などの発症を防ぐのにも歯周病の予防が有効な手立てということですね。

全てが歯周病が原因ではありませんが、歯周病の予防や治療により、その疾患が改善したり予防できたりする可能性のある方はたくさんいらっしゃると思っています。もちろん身体の中に菌が入るというのは、歯周病に限りません。小腸からの場合もあるし、手術やケガの傷口から入る場合もあります。ただ手術やケガをした時は一過性で慢性的ではないので生活習慣病との関係はそれほど高くはないと思います。進行したの歯周病の場合は細菌が持続的に侵入して身体のどこかで慢性炎症を起こしている可能性が高い状態ですので、積極的に予防と治療が必要だと思います。

最近始められたバクテリアセラピーについて教えてください。

プロバイオティクス(乳酸菌)を使った療法で、ヨーロッパで新しく誕生した予防医学です。口の中の善玉菌を増やしてあげて悪玉菌を減らすのを促すものです。
これと歯石取りを組み合わせます。歯石取りをした直後は、善玉菌も悪玉菌もその他の日和見菌も激減しますが、4週間ぐらいすると元の細菌数まで戻ってしまいます。しかも、悪玉菌と善玉菌の比率もほぼ元に戻ってしまうと言われています。歯石を取ってもまたつきやすい人は悪玉菌の比率が多いのかもしれません。もちろん食生活も関係していますので一概には言えませんが。
そこで、歯石取りをして全体の細菌数が減ったところに、プロバイオティクスを使ってあげると口腔内の口内細菌叢(口内フローラ)が改善できるのではないかと、始まったのがバクテリアセラピーです。当院では治療に使用する水にオゾン水を使用していますので、除菌の段階の効果がより高いと考えています。

菌質の改善というわけですね。先生は、「ドックベストセメント療法」など歯科治療でも先進的なものにも意欲的に取り組んでいらっしゃいますが、その一番の理由は?

実は僕自身、中学・高校生の時に治療した歯が中の方からダメになって不自由な思いをしたりという経験がありまして、「あの時もっと良い治療法はなかったものなのかな?」と強く思うことがよくありました。そういった中で、自分が受けたい治療、家族に受けさせたい治療の存在を知り、学んでいくと、これは是非皆さんにも知って欲しいという気持ちになりますね。

今後は「歯科栄養療法」や「点滴療法」もご計画と聞いています。

歯科栄養療法の一部は始めています。これも元々は自分のために始めたものです。
以前は僕自身、生活習慣は決して良いとは言えない生活をしていたためか、慢性的に体調があまり良くないような状態でした。何か疾患があるというわけではなかったんですが、なんとなくだるかったり、体重も年々増えるというような状態でした。血液検査の結果も、特別悪くはないんですが、中性脂肪とかコレステロールとかいつも指摘されているような状態でした。
でも、一年半ぐらい前から栄養療法を実践したところ、体重はみるみる減って大学生時代ぐらいまで戻るし、体の不調も少なくなりました。血液検査の結果も良くなりました。食生活の改善とサプリメントだけでこんなに良くなるんだと感動しました。
当院では基本的に自分自身が本当に良いと思ったことしか薦めていません。栄養療法も自分が健康になりたくて、勉強したら凄く面白くて、効果もあったので皆さんにに教えたくなったんです。

ご開院1年半を迎えられての感想をお聞かせください。

口の中の健康は、どうしても後回しにされてしまっているような気がします。そういう意識を変えていきたいですね。
例えば女性は美容室に1ヵ月に1回とか2回とか行かれる。でも、綺麗な白い歯にするための金額は高いと感じる。髪はすぐに伸びてしまいますが、歯は質の高い治療を受ければ、長く使えるものです。美容室に10年通ったとしたらすごい金額になると思いますが、10年以上使える歯を入れてもそこまで高くはならないと思います。
でも、最近は健康意識が高い方もたくさんいらっしゃいます。それでもまだまだ絶対数は少ないので、今は啓蒙段階なのかなと思っています。

(取材日:平成29年9月29日)


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