緑内障にも対応した光凝固装置「パスカル」導入

■ 武田 守正院長

医療法人社団サンピアザたけだ眼科
武田 守正院長
札幌市厚別区厚別中央2条5丁目7-2サンピアザ3F TEL.011-890-2363


日帰り手術など眼科の診療分野でも進むレーザー治療。サンピアザたけだ眼科では、これまで対応していなかった緑内障の眼圧降下も治療可能な最新型レーザー光凝固装置「パスカル」を導入、患者の負担軽減に心を配っている。同クリニックの武田守正院長に緑内障と導入した「パスカル」について聞いた。(画像:導入したレーザー光凝固装置「パスカル」)

緑内障について教えてください。

緑内障は、眼圧が高くなることで視神経が障害され、視野(見える範囲)が狭くなったり、部分的に見えなくなったりする病気です。

実に、日本における失明原因の第1位を占めており、大きな社会問題として考えられています。40歳以上の日本人における緑内障有病率は、5.0%(20人に1人)であることが分かりました。緑内障の一番の恐ろしさは、喪失した視野や視力を治療によって取り戻すことができないところです。

眼の中に満たされている液体を房水といいますが、房水による眼球内の圧力が眼圧です。

眼球内の房水が増加すると眼圧が上昇して、視神経を圧迫し、視神経の形(乳頭形状)と機能(視野)の特徴的な変化から診断されます。

どうして房水は増えるのでしょう?

房水は常に毛様体から分泌されて、眼球内を循環しています。何かの原因で房水の排出路である隅角の線維柱帯が詰まったり、働きが悪くなると、眼球内に房水が溜まり、眼圧が上昇します。

眼圧が問題ということですね。

そうともいえません。日本眼科学会緑内障診療ガイドラインには、『緑内障は,視神経と視野に特徴的変化を有し,通常,眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である』とあります。つまり、眼圧が高いことが緑内障診断の条件ではなくなっています。現に、「正常眼圧緑内障」という、眼圧が高くない緑内障が、日本人の緑内障の約7割を占めています。しかしながら、眼圧を下げることのみが、緑内障の唯一の治療法であることは変わりありません。

視神経の血液循環機能の低下、免疫、酸化ストレスなどの多くの因子が複雑に影響し、通常では緑内障を起こさない程度の眼圧でも視神経が障害されるのではないかと考えられています。「正常眼圧緑内障」の場合は高齢者が多く、近視の頻度も高いことから、加齢や近視もリスク要因であると考えられています。

ですから緑内障の診断には、眼圧測定だけでなく、眼底検査、視野検査、隅角検査など多くの検査が必要です。

どのような症状がでてくるのですか?

ほとんどの場合、自覚症状はありません。検査ではじめて緑内障と診断します。

慢性の緑内障の進行は、とてもゆっくりと進み、発病後、何年あるいは何十年もかかって視野の異常に気づく人もいます。

緑内障は、視力に影響する中心部よりもその周囲から見えなくなっていくことが多いのです。ですから、視力検査でも、視力が落ちていなければ視野の異常に気がつかないことも多く、見え方がおかしい、と気づいたときには緑内障はかなり進行してしまっていることもあります。

緑内障にもいろいろなタイプがあるのでしょうか?

大きく分けると、原因が分からない原発緑内障、他の病気に引き続いて起こる続発緑内障、隅角(房水の排出口であるシュレム管がある)の先天的な異常のため起こる小児緑内障の3つがあります。一般的に緑内障と呼ばれているのは、原発緑内障のことで緑内障の90%以上を占めています。

原発緑内障は、さらに房水の排出路の目詰まりで起こる原発開放隅角緑内障と隅角が塞がることで起こる原発閉塞隅角緑内障の2つのタイプに分けられます。

原発開放隅角緑内障は男女を問わず40歳以上に多く、原発閉塞隅角緑内障は60歳以上の女性や遠視の方に多くみられ、急性の発作(眼痛、霧視、頭痛、嘔気など)を起こす危険性があります。

自覚症状がないだけに、定期的に眼科専門医による検査を受け、早期に発見し、治療を開始する事が大切です。

導入されたレーザー光凝固装置は、緑内障の眼圧降下も治療可能ということですが。

これまでレーザー光凝固装置では糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、加齢黄斑変性、網膜裂孔などの治療を行ってきました。当院で導入したレーザー光凝固装置「パスカル」は、新たにパターン走査レーザー線維柱帯形成術(PSLT=Pattern Scanning Laser Trabeculoplasty)というレーザー治療が可能になりました。レーザー照射により発生する温熱効果を利用し、房水流出の抵抗を軽減させ、眼圧下降効果を得るものす。

PLSTにより緑内障の眼圧降下のレーザー光凝固術が可能となったのですね。

緑内障による視野欠損が進行しないように点眼薬で治療しても眼圧下降が期待できない場合や、患者様にとって点眼自体がストレスになるような場合、このPSLTで眼圧降下を図ります。緑内障にもレーザー治療という選択肢が増えたわけです。

そのほかにメリットは?

■「パスカル」での治療

一番のメリットは治療による患者様の負担軽減です。

パターンレーザーと呼ばれる多数のスポット照射により、治療時間を短縮することが可能になりました。糖尿病網膜症の治療では、合併症を避けるため治療を複数回に分ける必要がありました。しかし、パスカルは治療回数を少なくし、患者様の身体的・精神的な負担を軽減することが可能です。

また、従来のレーザー治療では、個人差もありますが、痛みを感じる方もいらっしゃいました。パスカルは、レーザー照射時間が短いので、患者様の痛みを大きく軽減できます。

さらに、これまでのレーザーでは網膜を凝固する際に発生する熱が、眼球の外側に伝わり周辺の神経を刺激することで痛みを感じさせることと、併せて熱による組織障害で黄斑浮腫を起こしやすくなり、一時的な視力低下の原因となるリスクがありました。

これもパスカルの場合、レーザー照射時間が短く、少ない熱の発生に加えて、熱が眼球の外側まで伝わりにくいという特徴があり、健常な血管への障害も少ないので、眼に対するダメージを軽減できます。

患者様への様々なメリットをご提供できるわけですね。

従来のレーザー光凝固術には、視力を司る黄斑部にダメージを与え視力を低下させてしまうリスクがありました。

しかし、今回のパスカルで導入された新しい機能エンドポイントマネジメントにより、黄斑部のダメージを最小にし、治療することが可能になりました。

目のお悩みや苦痛を解消できるように、できる限り最先端の医療機器を導入し治療にあたっています。少しでも患者様のお役に立ちたいというのが、当クリニックの信念です。何かご不安等がございましたら遠慮なくご相談下さい。

「メディカルページ札幌2020夏号」(令和2年8月13日発行)の冊子に掲載された記事です。


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