関節リウマチとはどんな病気

■種市幸二 院長

医療法人社団 豊水会 たねいちリウマチクリニック 
種 市 幸 二 院長
札幌市豊平区月寒中央通8丁目4-7 TEL.011-853-7307


 関節リウマチは関節の痛みや腫れが続くと関節の破壊が生じ、結果として関節の変形が起こり、その関節が使えなくなり、身体機能障害を起こしてしまう病気です。以前には病気になってから10年間で40%の患者さんが何らかの身体障害を持つようになる治療の難しい病気でした。(写真1)
 しかしながら、現在では関節の中でどんな細胞やどんな物質が骨の破壊、軟骨の減少、関節の痛みや腫れを起こすのかが解明され、適切な診断と適切な治療をすれば関節の変形をおこさせないことが可能となっています。

どんな症状か?

■写真1

 関節リウマチの発症のピークは40歳前後の働き盛りで女性に多い(4:1)とされてきましたが、近年日本においては高齢化が急速に進み、それに伴い関節リウマチにおいても発症のピークが高齢者にシフトしています。
 関節リウマチの初期症状は朝のこわばりや関節の痛みや腫れが特徴的です。
 朝のこわばりは朝起きたときに関節が油切れの様にぎりぎりした感じを言います。また、朝起きた時にグーができない、手が握りづらい感じでもあります。数分で消失するこわばりは心配ありませんが、30分以上続く場合は病気の始まりの可能性があります。
 関節の痛みや腫れが手の指の第2関節や第3関節、手首、足指に生じた場合は病気の始まりの可能性は高いです。一方、膝や肩から起こることもありますし、一つの関節の痛みや腫れから起こることもありますので注意が必要です。高齢者は多数の関節の痛みや腫れで生じ、急速に日常生活動作ができなくなる場合が多く特に注意が必要です。
 また、タバコは病気の発症や悪化に関係していることが知られており、禁煙も重要です。

早期診断・早期治療が最も重要

 関節リウマチは発症後1~2年で急速に関節破壊が起こり、この時期に適切な治療をしないと関節の30%くらいが破壊します。早期に治療し、関節の炎症と骨破壊を強力に抑える必要があります。炎症を抑えれば病気の進行を止めることが可能となります。
 病気の進行が止まれば、関節破壊や関節の変形は起こりません。早期診断、早期治療すればするほど、関節リウマチの寛解(痛みなし、腫れなし、炎症なし、本人満足、副作用なし)する率は高くなります。

治療―目標は寛解

 早期に関節リウマチを診断し、早期に関節リウマチを良くする薬(抗リウマチ薬)を開始し、関節の炎症と関節破壊を強力に抑える必要があります。
投与可能で活動性がある場合はメトトレキサートが第一選択薬です。メトトレキサートが投与できない場合は他の抗リウマチ薬が選択されます。特に、高齢者にメトトレキサートを投与する場合は細心の注意が必要です。
 メトトレキサートや他の抗リウマチ薬で効果不十分の場合は生物学的製剤が選択されます。(図1)
 関節の炎症や破壊を起こす物質は炎症性サイトカインと呼ばれ、腫瘍壊死因子(TNF-)やインターロイキン6などがあります。これらの炎症性サイトカインを直接抑えるのが生物学的製剤と言われています。生物学的製剤は炎症や関節破壊を強力に抑え、今まで治療が困難であった重い関節リウマチでも良い状態にできる強力な治療手段です。現在、日本では7種類の生物学的製剤(点滴、皮下注射)が使用できます。また、近年、経口剤で生物学的製剤に匹敵するJAK阻害薬も出てきました。
 JAK阻害薬のJAKとは、ヤヌスキナーゼ(Janus kinase)の略称で、細胞の外から様々な刺激を細胞内に伝えるために働く酵素群のひとつです。複数の炎症性サイトカインを細胞の中で抑え、炎症を鎮静化します。生物学的製剤は注射ですが、JAK阻害薬は毎日内服する経口薬です。

まとめ

 早期診断、早期診断が最も重要でできるだけ早期に専門医による適切な治療を受けましょう。適切な治療により寛解を目指しましょう。

 ■図1

◆寄稿:たねいちリウマチクリニック 種市幸二院長
「メディカルページ札幌2019冬号」(令和元年12月12日発行)の冊子に掲載された記事です。


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