建てたいと思い描いた形が一番いいお墓
~札幌のお墓事情と大切にしたい供養の心~
語る人:宗教法人 花豊寺《全天候型納骨堂》新琴似 北の杜御廟 統括部長 木村克也氏
「メディカルページ」は、医療機関の情報を提供して、みなさんの健康な暮らしを応援したいと考えています。でも、大変残念なことですが、生命には限りがあります。ご自身だけでなく、大切な人もいつかはならず別れの時がくるという冷徹な運命から逃れることはできません。だとしたら健康な時こそ、運命を受け入れる準備をすることも必要ではないでしょうか。『北の杜御廟』統括部長・木村克也氏に、いろいろと分からないことの多いお墓についてお聞きしました。 |
「こうしたいと思ったお墓を建てるのが一番いいんです。お墓を建てるということは、普通の方なら一生に一度のことで、慣れている方はいらっしゃいません。お墓の知識がないという方が普通なんです。いろいろなところにご相談されて、話を聞いているうちに益々分からなくなる。そこで勉強しようといろんな本を読んだりしますが、どれも嘘ばっかりです」と、木村統括部長は語気を強めます。お墓に関する本によく出てくるのが、『墓相学』という言葉です。こんなことしてはいけないなどの表記ならまだしも、中には、そういうお墓は将来、子孫が途絶えるなどの恐ろしい注意さえ書いている本があります。
「そんなことがあるわけがありません」と木村統括部長はし、「こうしたいというその形が一番いいお墓です。何も惑わされることはありません」と話します。分からないことが多すぎて悩むお墓のこと。でも、分からないのは当たり前、自分が思ったお墓が一番という木村統括部長の言葉は、とても心強いアドバイスです。
◆札幌市の墓園の経緯
お墓は一般の土地ではなく、墓地や霊園に建てられます。ここで札幌市の霊園状況を振り返ってみましょう。現在、札幌市内には民間の霊園やお寺の境内墓地・納骨堂のほかに公共(市営)の墓地・霊園が19ヵ所あります。しかし、昭和59年の里塚霊園を最後に札幌市による公営墓地の募集はなくなりました。人口の増加とともに墓地の需要も増えたことから、札幌市は条例を定め、お墓を管理・運営するためだけに特化した財団法人もしくは宗教法人のみに許可する形を取り、最初に許可を受けた社団法人による真駒内滝野霊園が昭和58年から本格的に分譲を開始。続いて財団法人による藤野聖山園が募集を始め、この2施設により、公共墓地がなくなった札幌市のお墓需要に対応しました。
「どこにお墓を建てようかと考えた時にお参りのしやすさをみなさんお考えになるようです」と、木村統括部長は墓園の場所を選ぶ時に自宅などからの距離を重視する人が多いと話します。墓地不足は解消されましたが、市内の交通至便地にあったらというニーズが高まり、札幌市では、ある程度の場所で要件をみたす事業者が申請したら、審査の上で許可をするという形が続いています。札幌の公共墓地の募集がなくなってから32年経ちますが、現在、お墓を建てられないという状況にはありません」(木村統括部長)。
◆間違った『終活』と墓じまい
一方で、木村統括部長が危惧するのが、最近よくいわれる『終活』です。流通ジャーナリストの故金子哲雄氏が、存命時から葬儀等の準備をしていたことが具体例としてマスコミなどで報道され、ブームのようになっている『終活』。セミナーなども開かれていますが、そうした会場で生前葬を薦めたりする自称アドバイザーなどもいます。さらに自分の死後、子どもたちに負担をかけたくないという人や先祖代々のお墓を護っていくのが重荷な人が、今あるお墓を撤去や処分してしまう『墓じまい』も10年ほど前から増えていると木村統括部長は話します。「墓園はお墓を建ててくれる人がいて、その管理費で管理します。それが墓じまいされて、お墓がなくなると管理できなくなります。そうなれば守っていきたい人のお墓も維持できなくなってしまいます。何か大事な部分を見失っているのではないでしょうか」
供養の本来の言葉は追善供養。極楽浄土に行くためには亡くなった後でも善行を積まなければなりません、亡くなった人はそれができません。でも、後に残された人たちが善行を積んで供養すると、それが亡くなった人にも届きます。それが追善供養の意味です。決して難しいことではありません。
「親が子供たちに追善の道を教えない。お墓にも行かないので、お墓は必要ないという人が増えてきました。今の間違った『終活』は、そうした世情を反映しているのではないでしょうか。亡くなった方をお祀りするお墓を末永く利用するための施設が募園です。今、変な方に向かっている札幌市のお墓を取り巻く事情を何とかしたい」と話す木村統括部長は、「そのためにも供養の大切さを伝えたい」と語ってくれました。
(取材日:平成28年4月5日)