再び点眼薬(めぐすり)のお話

さし方や量、ジェネリックの点眼について

新川中央眼科 小川 佳一 院長
札幌市北区新川3条7丁目1-64 TEL 011-769-1010

目薬(点眼薬)は、ドラッグストアなどで買い求めてことも多い代表的な一般薬です。それだけに正しいさし方や、さす量などを気にせずに使っている方も多いのが現状です。新川中央眼科 小川佳一院長に点眼薬のお話の続きをお聞きしました。
<取材協力>
小川 佳一 氏
(新川中央眼科 院長)

「メディカルページ平成27年度改訂版」(平成27年12月5日発行)の冊子に掲載された記事です。

目薬のさし方

 

■小川佳一院長
■小川佳一院長

皆さんは目薬は角膜(黒目)に直接たらすもの、と思っていませんか?
確かに角膜からも吸収されますが、主に結膜嚢というスペースにたまってから吸収されます。
白目の表面には結膜という透明な皮があります。これは角膜の縁から始まって白目を覆い、途中で反転して瞼の裏側を形成します。この皮があるのでコンタクトが眼の裏まで入ってしまうことがないんですね。
この皮の折り返し点が円蓋部です。ちょうど袋の底のようになっていますので、このスペースを結膜嚢と呼び、涙が貯まるスペースです。点眼薬はここから吸収されます。
ですから、点眼は黒目にたらすものではなくこの結膜嚢に入れる意識でしていただいた方が良いです。具体的には、下まぶたを指で下げた「あっかんべー」をしたときに、瞼の裏の赤い部分が見えると思います。ここに垂らすのです。点眼の時に「眼が開けられない」という方も多くいますが、眼はつぶったままでも下瞼を下げてあげれば、スペースはできますので無理せずさせます。
また、点眼ボトルの場所が安定しない方には「げんこつ法」と呼ばれる方法があります。かかりつけの眼科で相談すると、指導してくれると思います。また、「らくらく点眼」「点眼君」などといった補助具も発売されていますので、こういった器具を使用されるのも一つの手かと思います。

点眼の量

■目の断面図

■目の断面図

1回の点眼で2滴、3滴ポタポタと垂らしていませんか?
結膜嚢の最大容量は30μℓ(マイクロリットル)です。点眼ボトルから出る1滴量は30~50μℓですから、1滴でも十分あふれる量です。
垂らした薬のほぼ全部が外に流れてしまって、無駄になっています。もったいないだけでなく、瞼の縁に大量に付着しますので逆に接触性皮膚炎を起こし、瞼がかゆくなる原因になることもあります。
「 でも入った気がしない」「入っているか不安」という方もいますが、実は睫毛付近が濡れているときには必要量が入っていることも多いです。
赤ちゃんに目薬をさす場合、あおむけに寝かせて目頭の凹みに1滴たらして池を作り、そこから眼の中に流れていくという方法をすることがあります。つまり皮膚の上に付着した点眼薬が伝って眼の中に入ってくれる分でも十分なのです。

■点眼補助具使用の一例

■点眼補助具使用の一例

ただその場合、皮膚に付着した分は濡らしたティッシュやガーゼで拭き取ってください。
点眼ボトルを押して目薬が出た後、ボトルに空気が吸い込まれます。もしこのときボトルの先端が睫毛や瞼の縁についていると、一緒に涙や皮膚の汚れ、化粧などが吸い込まれてしまいます。点眼容器の中まで一気に汚染されてしまいますので点眼時にはボトルの先端が触れないように気を付けてください。

ジェネリックの点眼

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■検査する小川院長

国は一生懸命ジェネリックを推奨していますが、これは健康保険の国庫負担分を減らすのが目的です。
ジェネリックとは特許の切れたお薬を、他のメーカーが真似て作っている薬です。欧米ではかなり普及しています。日本と違い健康保険のない国では競合品の出現でオリジナルの薬の値段も一緒に下がりますから、薬が安くなるという意味で非常に良い仕組みです。
日本の場合は、薬の値段は国が決めていますから、競争原理は働きません。
先発薬の値段をほとんど下げずに、ジェネリックだけ安く設定しています。どうせならオリジナルも下げてしまえばいいのに…と思うのですが。
また、日本のジェネリックと欧米の考えるジェネリックには大きな違いがあり、欧米では主成分だけではなく、添加物も含めてすべて同じでなければジェネリックとして認められません。一方、日本では主成分が同じであれば添加物が違っていても同じものと扱われます。同じカレー粉を使っていれば他に何を入れようとすべて同じカレーと言っているようなものです。使われる添加物も過去に安全が確認されているものなら何でもよいのです。
主剤との相性や相乗効果といったものはチェックされていません。しかも効果の同等性、安全性、安定性といったことを調べる治験という公的な評価を経ずに販売が可能です。
点眼薬の場合は肝心の主成分の濃度は多くて3%程度です。0.1%程度のものがほとんどで、中には0.01%などもあります。主成分が90%以上を占める内服薬と違って点眼薬には主成分と同じくらいの量の添加物が入っています。
ですからこれを同等品とみるかどうかは担当の先生の考え方次第になります。僕個人の見解としては内服薬でジェネリックは使いますが、点眼薬ではほとんど使わない方針です。
気になる方は、主治医の先生に聞いてみてください。

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