屈折矯正手術としての白内障手術 

新川中央眼科 小川 佳一 院長
札幌市北区新川3条7丁目1-64 TEL 011-769-1010

屈折矯正手術(近視手術)といえば、LASIKが知られていますが、近時、白内障手術が屈折矯正手術として注目を集めています。新川中央眼科院長の小川先生に近視手術としての白内障手術について教えていただきました。
<取材協力>
小川 佳一 氏
(新川中央眼科 院長)
「メディカルページ平成28年度版」(平成28年6月1日発行)の冊子に掲載された記事です。

■小川佳一院長
 ■小川佳一院長

屈折矯正手術(近視手術)というとLASIKをイメージされる方が多いと思いますが、近年白内障手術は屈折矯正手術としての側面が重視されてきています。
白内障は目の中のレンズ(水晶体)が白く濁り、ものが見えにくくなってくる状態です。 白内障の手術では水晶体を取り出し、代わりに人工のレンズを入れることでクリアにものが見えるようになります。
20年位前までの白内障手術黎明期には「暗くなって見えなくなった」が、「明るくなった」にするくらいの精度でしたから、視力が本当に出なくなってから手術をしていました。この当時は「開眼手術」であるという認識の時代です。
10年位前からは手術の機械が進歩し、より安全な手術ができるようになるとともに精度も上がってきました。この頃には術後視力だけでなく、見え方の質も少しずつ評価されるようになってきました。
そして、ここ10年間では白内障手術は屈折矯正手術の一部を担うようになってきました。

屈折矯正手術として注目を集める白内障手術

それは、眼内レンズの度数決定に最も重要な眼軸(眼の奥行き)を測る機械が今までの超音波からレーザーに切り替わったこと、角膜形状(黒目のカーブ)解析でWave Front Analyzerをはじめとする精度の高い機械が出現したことによります。
眼内レンズの決定に必要な眼球のサイズ・形状の測定精度が上がることによって、術後の屈折値の精度も上がってきたのです。
さらに乱視用レンズ、多焦点レンズが開発されるといよいよ屈折矯正手術としての白内障手術に注目が集まるようになりました。

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ここで改めて白内障手術について説明しますと、眼はカメラと同じ構造をしています。カメラのレンズの該当する水晶体が白く濁ってくるのが白内障です。曇りガラス越しに写真を撮っているわけですから暗くぼやけた画像が眼の中に入ってきます。
この濁ったレンズを、人工の透明なレンズに置き換えるのが白内障手術です。
もちろんレンズですから眼鏡と同じように近視・遠視の度数がいろいろあります。このレンズの度数を調整することで術後の近視・遠視の状態をある程度コントロールできます。一般的には軽度の近視になるように選択しています。

見え方の質が評価される時代

現在では、視力が出ないから手術をするのではなく、視力が1.0見えていても「見え方の質が低下した」ということで手術することもできるようになりました。
そうなると普段から眼鏡を手放せない強度近視・強度遠視の方にとっては、日常は眼鏡をかけなくてもそこそこ生活できるレベルの度数に合わせるだけで、かなり楽になります。さらに最近は乱視矯正が可能な眼内レンズの他に、健康保険は効きませんが老眼の矯正が可能な多焦点眼内レンズというレンズの選択もできるようになりました。

他の屈折矯正手術と比べるとどうでしょうか?

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LASIKイメージ

LASIKでは角膜表面を削りレンズを彫り込んで矯正しています。矯正精度は最も高いのですが、もともと柔らかい角膜を削っているため時間がたつと変形し屈折が変化してくることが分かってきました。快適な見え方を維持できるのは10年から15年となります。また、角膜の形状が変則的になるため、白内障手術が必要になった時には、屈折値計算方法が確立されておらず矯
正精度は低くなること、多焦点眼内レンズでは視認性が低下することが予測されるため選択できなくなる可能性があります。年齢とともに老眼は必ず生じます。

toku27e20代から30代の方であれば眼鏡が不要な期間が十分にありますのでメリットは大いにあります。しかし老眼鏡使用年齢や白内障手術が迫った世代ではその後のデメリットを考慮して検討する必要があります。

眼内コンタクトレンズ(ICL)について

最近普及しだした眼内コンタクトレンズ(ICL)は、水晶体の前にレンズを1枚挿入する手術です。LASIKでは矯正できない強度近視にも使用でき、乱視の矯正も可能です。しかし、術後合併症として白内障があげられます。合併症が起きなくても、やはり将来的に白内障にはなります。
toku27fICLは白内障手術を行うときに簡単に摘出できますし、角膜形状を変化させているわけではありませんので、白内障手術時の眼内レンズ選択の際、精度には影響しません。しかし老眼年齢、白内障年齢の患者様にとってはメリットを享受できる期間は短くなります。
手術ではありませんが2重焦点コンタクトレンズというのも一つの方法です。つけ外しや洗浄・管理の問題はありますが、手術ではないため不可逆的なリスクは少なくなります。ただ、乱視の矯正ができないのが残念です。(技術的には制作可能ですが、市場が小さいため「製造・販売の予定はない」とのことです。)
乱視の少ない方では白内障手術までの間は2重焦点コンタクトレンズで矯正し、いよいよ手術となった時に多焦点眼内レンズを選択するのが良いでしょう。

多彩な方法での矯正が可能に

これらに比べると白内障手術は遠視・近視・乱視の矯正の精度は低く眼鏡を全く不要にするわけではありませんが、術後の屈折値はほぼ安定しており、将来的な変動も少ないという点で有効な方法です。
いずれにしてもLASIKか眼鏡・コンタクトレンズだけだった屈折矯正時代から、今は多彩な方法での矯正が可能になりました。
各方法とも一長一短がありますので自分に合った方法を見つけるためにも、眼科できちんと相談いただくことが大事です。

◆寄稿:新川中央眼科 院長 小川佳一氏


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