増加する外国人患者に対応する函館中央病院 病院・薬局向け多言語翻訳サービスを試験導入
近時、外国人旅行者の来日が急増しています。函館市も例外ではなく、台湾を中心に東南アジアからの外国人旅行者が増加。旅行中のケガや病気などを発症する外国人も増加するなかで、頭を悩ませているのが、多言語での診療を要求される医療機関です。通訳担当がいても365日フル対応は無理。また、医師だけでなく看護師にも外国人患者との対話が要求されます。その対応として、社会福祉法人函館厚生院函館中央病院(橋本友幸病院長、函館市本町33番2号)は4ヶ国語(中・英・韓・ロシア)の翻訳機能を持つ多言語翻訳サービスを試験導入しました。まだ試験段階ながら外国人診療に新たな取り組みを始めた同病院にお話をお伺いしました。 |
外国人観光客が急増している函館市。「感覚的にも外国人旅行者の方が増えていると思います。今後も増えてくるのであれば、病院としても多言語に対応した翻訳が必要になる状況も当然増えてきます」と、函館中央病院の畠山雅利医事課係長は、増加する外国人の患者に対応するため翻訳、それも医療に特化した翻訳の必要性が高まっていると話します。
函館の外国人宿泊客数はこの6年間に3倍増
北海道がまとめた函館市における外国人宿泊客数の推移を別表にまとめました。
平成21年度12万7,565人だった宿泊客数は、平成27年度には39万7,468人と、実に3倍以上に増加しました。
また、函館市消防本部の救急搬送人員は、平成21年に1万2,141人に対し、平成27年は1万3,812人で14%の増加ですが、このうち外国人(旅行者以外の日本在住者も含む)は、2倍以上に増加しています。
いずれのデータをみても、畠山係長が話すように函館市における外国人旅行者が急増している状況は、数値にも明確に表れています。
課題だった外国人診療の翻訳システム
畠山係長は、「翻訳システムはないのかという事を、何年も前から考えてはいたんです」とし、医療機関の会合などでも、外国人の診療をどうしているのかが話題になっていたともいいます。函館中央病院には、英語通訳を担当している総務課の石川圭子さんがいますが、24時間フル対応はできません。
「外国人の方が患者さんで来られた時には、何か翻訳のシステムがないかと、しばらくは探すんですが、毎日来られるわけではない。それで話が立ち消えになってしまい、また来られると、何かないかとまた探す。それが今回、NECソリューションイノベータさんから、こういうものが開発されているというお話がきて、それでは試験的に導入してみようということになったのです」と、畠山係長は今回、病院・薬局向けの多言語翻訳サービスを試験的に導入した経緯を話します。
1台のタブレットを使い対面式で会話
函館中央病院が試験導入した多言語翻訳サービスは、4ヶ国語(中・英・韓・ロシア)の翻訳機能を持っています。
外国人患者と医師や看護師などの医療従事者が、1台の携帯端末を使い対面式で使用します。会話を音声入力で翻訳するほか、あらかじめ組み込まれた文章や単語から文章化したものを表示する簡易入力機能も持っています。
表現のしにくい痛みの強さは表情の異なる顔の画像から患者が選ぶユニバーサル仕様も盛り込むなど、翻訳を通して患者の主訴を医療従事者が正しく理解するためのサポートを行います。
患者との会話は、テキストデータで表示し、プイバシー保護のため会話が終了したら、表示されたテキストデータはすべて消去されます。
「私は翻訳内容の追加と校正をさせて頂いております」と話すのは、同病院で通訳を担当している石川さん。
医療機関に合わせてカスタマイズ
「タブレットの中には、他の病院でもよく使われるサンプルデータが入っていて、新患者さまの受付の仕方とか、問診内容など共通することも多いんですが、うちの病院では異なるところもございます。例えば窓口の番号とか診療科などを、そのまま使えないところを直しました。
また、外国人患者さまからのよくある訴えや質問、更にうちの病院には、こういう言葉が欲しいという希望をどんどん足していただきました」という石川さんの話から、この多言語翻訳サービスが、各医療機関のシステムや使用する言葉に合わせて柔軟に対応可能なのではないかと予想されます。。
「試験的に使い始めたところなので、この翻訳サービスが入り、英語圏の患者さんを始め、多言語診療にうちの病院は万全ですということではありません。NECソリューションイノベータさんも改善しなければならない点もあると話しています。今は試験段階であり、課題もありますが、これから共にステップアップしていきたい」と畠山係長は話しています。 多言語翻訳サービスの真価を問われるのは、これからです。
取材メモ:「函館で外国人患者が増加していることから札幌を始めとする北海道各地でもさらなる増加が予想されます。また、北海道だけでなく全国の医療機関においても多言語対応のニーズがより一層高まることが予想されます」
システム開発元:NECソリューションイノベータ株式会社
(取材日:平成28年9月26日)