ドクターに聞く「眼科不定愁訴(ふていしゅうそ)と結膜弛緩症(けつまくしかんしょう)」
●新川中央眼科
小川 佳一 院長
札幌市北区新川3条7丁目1-64 TEL 011-769-1010
眼がゴロゴロしたり、しょぼしょぼしたりとなんとなく具合が悪い状態、それは「結膜弛緩症(けつまくしかんしょう)」かもしれません。今回は「結膜弛緩症」について、新川中央眼科 小川佳一院長に語っていただきました。 |
眼科不定愁訴(ふていしゅうそ)と結膜弛緩症(けつまくしかんしょう)
加齢ともに眼科不定愁訴と呼ばれる状態で受診される方が増えてきます。
不定愁訴とは、「頭が重い」、「イライラする」、「疲労感が取れない」、「よく眠れない」などの、何となく体調が悪いという自覚症状を訴えるが、検査をしても原因となる病気が見つからない状態を指します。 患者からの訴え(主訴)は強いが主観的で多岐にわたり、客観的所見に乏しいのが特徴です。眼科では「眼がゴロゴロする」「しょぼしょぼする。」「しぶい」「いずい」「眼が開けにくい」「もやっとする」「涙が出る」などです。はっきりとした所見がなく、原因の決定打が見つからず、「とりあえず目薬」と言って抗生剤や抗炎症剤を処方されて終わることも多いです。(抗生剤は長期間使用すると耐性菌の出現が問題になりますので、今はダラダラと長期間処方することは良くないとなっているのですが…。)
最近、眼科不定愁訴の原因として「ドライアイ」や「結膜弛緩症」の関連が指摘されるようになりました。
結膜弛緩症はその名の通り、結膜が弛緩した状態です。眼表面のうち白目から瞼の裏側にかけて結膜という半透明の膜が覆っています。結膜には適度なゆるみがあり、上下左右など眼が動いたときにつっぱらないようになっています。このゆるみが平均より強い状態を結膜弛緩症といいます。ゆるんだ結膜は下まぶたに沿って存在し、程度が強いときは黒目(角膜)へ乗り上がっていることもあります。
結膜弛緩症の原因
結膜弛緩症の原因はよくわかっていませんが、加齢とともに増える傾向にあります。眼球運動や瞬きにともなって、 弛緩結膜(余剰結膜ともいえます)が過剰に動くため、異物感を生じます。強い痛みではなく、ごろごろする、しょぼしょぼする、 何か挟まっている感じがするなど、不快感に近いような症状となります。また結膜嚢という涙を貯めておくスペースを、緩んだ結膜が埋めてしまうため、涙をためておくことができず涙がたまった感じも出ます。弛緩結膜を目脂と間違えて、取り除こうと過剰に眼を拭く方もいます。また、こういった症状から結膜弛緩症は、しばしば疲れ目(眼精疲労)などと診断され、見過ごされていることもあります。
結膜弛緩症は物理的に結膜が余っている状態なので、点眼薬で症状は軽快することはあっても、完治は難しいのです。
結膜弛緩症の治療
軽度の結膜弛緩症はまずは点眼で違和感を抑えて様子を見ます。重度の場合でも、手術で治すことができます。手術は弛緩結膜を切除する(切除法)か、弛緩結膜を奥に引っ張って延ばす(縫着法)方法です。一般的に普及しているのは切除法です。縫着法は私が大学勤務時代に考案し多数行い非常に良い成績でしたが、手技が面倒なのであまり普及していません。(同時期に横浜相鉄ビル眼科医院の大高先生も同じ術式を考案し論文に発表されました。)この方法は結膜嚢の形成が良く、涙の貯留という点からも有利と考えています。ですから当院では縫着法による再建を主に採用しています。
いずれにしても、日帰りでできる手術ですので症状が気になる方は検討してみる価値はあります。
◆寄稿:新川中央眼科 院長 小川佳一氏
新川中央眼科
札幌市北区新川3条7丁目1-64
TEL 011-769-1010 ■休診日/日曜・祝日
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