近視矯正レンズ治療「オルソケラトロジー」

医療法人社団 サンピアザたけだ眼科  院長 武田 守正

 近年、近視のこどもが増えています。アジア各国で、近視の抑制についての取り組みがおこなわれています。日本でも、眼科学会では近視の原因究明、予防についての研究が最も重要なテーマのひとつとなっています。近視が進行するということは、眼軸長(眼球の前後の長さ)が伸びることを意味しています。それに伴い、白内障、緑内障、網膜剥離、黄斑変性など代表的な眼科の病気の発症率が高くなると言われています。

 近視の進行は、遺伝と環境の両方が関係すると言われていますが、近年になって近視が増えているのは、環境による影響が大きいと考えられています。

 近視を進まないようにするには、一般的に言われてきた、近くの物を、暗いところで、悪い姿勢で見続けることは良くないことは、言うまでもありませんが、1日2時間以上、外へ出て太陽の光を浴びることが、近視の予防になることが分かってきました。

 眼科が関わることができる近視予防法として、オルソケラトロジーがあります。特殊なハードコンタクトレンズを睡眠時に装着して、角膜のカーブをレーシックで削るのと同じように平らにし、焦点を後方にずらすことで、裸眼視力を良くする屈折矯正法です。

 レンズを外しても一定時間はその形状が続くので、日中は裸眼で過ごすといったことが可能になります。レーシックと違い、就寝時の装着を中止すると数日で角膜が元に戻り、角膜の強度も低下しないので、スポーツをする人にとっては最適な矯正法と言えます。

 しかし、矯正できる近視の度には限界があります。レンズは、高酸素透過性の素材で安全性は高いのですが、角膜に傷がついたり感染をおこしたりするなどの危険性は皆無ではありません。用法を守って使用することが必要です。

 オルソケラトロジーは、近視の矯正が得られるだけでなく、眼軸の延長が抑制される(通常の眼鏡やコンタクトレンズ比で平均30~60%の抑制効果)ことが多くの研究により示されており、10年を超える有効性と安全性の報告もあることから、比較的信頼性の高い治療法と言えます。また夜間に大人の管理のもとで装用できることから、年齢の低い子どもで、確実な近視進行抑制効果を得たい場合に選択されることが多くあります。

 欠点としては、自由診療のため、初期に費用がかさむこと、ハードコンタクトの装用に抵抗がある場合は、装用が困難なことがあげられます。また使い捨てのレンズではなく、角膜を圧迫することから、適切な処方や管理を怠ると角膜感染症など失明につながる重篤な合併症を起こすこともあります。

 当院では、10年以上オルソケラトロジー治療をおこなっています。痛くて挿入できない人や、視力が出なかった人など適応外の人はいましたが、重大な角膜障害をきたした例はまだありません。事前に適性検査を行い、子どもであれば、常に大人の管理の元で、ガイドラインを遵守して使用することとなっています。


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