生活習慣病や金属アレルギーも歯科治療の分野  医科との連携でさらに高度な治療を目指す

医療法人真幸会 ユアデンタルオフィス 髙橋 真人 (まひと) 院長
札幌市北区新琴似2条10丁目1-10 TEL 011-761-3000

生活習慣病との関連や金属アレルギーなど、これまで医科の専門領域とされてきた症状が歯科の治療分野にも密接な関係があることが分かってきました。単に歯の痛みを治すだけの治療から、先進的な歯科治療分野を意欲的に進めているユアデンタルオフィス院長の髙橋真人先生に歯科と医科の連携の必要性をまじえて、お話していただきました。
<取材協力>
髙橋真人 氏
(ユアデンタルオフィス 院長)
「メディカルページ札幌版 平成29年夏号」(平成29年6月5日発行)の冊子に掲載された記事です。

歯周病は、歯科の専門領域ですが他の生活習慣病と関連があるそうですね。

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■髙橋院長

 

歯周病も生活習慣病の一つですが、他の生活習慣病に関与していることがわかっています。歯周病が進行して歯磨きぐらいでも出血するような方は、菌血症が起こっている可能性が高いのです。菌血症というのは細菌が血液中に侵入した状態です。特に口腔内の細菌が血液中に侵入した状態を歯原性菌血症といいます。
通常は、血管内に細菌が入り込むことがないように厳重に防御されていますが、歯周病が進行すると、その歯茎の内側に潰瘍(傷)ができて細菌が血管内に入り込みやすい状態になります。血管内に入り込んだ細菌は約90秒で全身にまわるそうです。進行した歯周病を放置しておくと、持続的に菌血症が起こりやすくなり、血管内で慢性炎症を起こします。
動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞が起こった場所やリウマチの患者さんの関節の組織などから歯周病菌に関連する物質がたびたび検出されているということがわかってきました。このことから、これらの疾患と歯周病には何らかの関係があると考えられています。また、歯周病が進行した人は、そうではない人と比べると糖尿病にかかるリスクが高くなるということもわかってきています。これまで、糖尿病の人が、そうでない人に比べて歯周病のリスクが高いということはわかっていましたが、その逆もあるということです。従って、歯周病を治療・予防することが全身の健康を維持増進する意味でも、重要な要素の一つであることがわかると思います。
歯科医師としては当然、歯周病の治療は行いますが、これからは、予防に力を入れていく必要があると考えています。予防というのは、ブラッシング指導や歯石除去などのクリーニングだけではなく、食生活の改善、栄養状態の改善、そして口腔内細菌叢(さいきんそう=細菌の集まり)の改善も必要となってきます。

食生活の改善、栄養状態の改善、口腔内細菌叢の改善とは?

口腔内の歯茎や粘膜は常にある一定の周期で新しいものに置き換わっていきます。これをターンオーバーといいます。ターンオーバーの周期は歯茎ですと9~12日、口腔粘膜で1~数日と言われています。歯茎や口腔内の粘膜にはコラーゲンを含みますが、このコラーゲンを生成するために必要な栄養素が不足していると、ターンオーバーがうまくいかなかったり、歯周病の部分の修復が遅れることになります。従って、栄養状態を整えることは、歯周病治療における治癒を円滑に進めるために必要なのです。
最近、腸内フローラという言葉を耳にすることが多くなってきたと思います。口腔内も腸と同じように色々な細菌が生息して細菌叢を形成しています。口腔内には700種類以上の細菌が生息していると言われています。その中に、善玉菌、悪玉菌、日和見菌(ひよりみきん)がバランスを保ちながら生息しています。このバランスは人によって千差万別です。悪玉菌と呼ばれている細菌の割合が多いほど、歯周病やむし歯のリスクが高く、菌血症によるリスクも高いと言えます。細菌叢のバランスを改善することで、このリスクを軽減することが可能となります。

生活習慣病は医科の領域と思われがちですね。

歯周病を除く生活習慣病に対しての治療や指導を行うのは医科の役割。でも、その疾患の悪化あるいは原因となっているかもしれない歯周病の治療や予防は歯科の役割です。ですから、医科と歯科は切り離せない関係があるのです。歯周病菌が菌血症により全身の血管に回っていることを考えると、歯科医も口の中だけ診るのではなく、全身への影響を考えなければなりません。また医科の先生も口の中にも目を向けて欲しいと思います。医療として考えれば、同じヒトの体なのですから、お互いに重なる部分は絶対にあります。そういうことを理解してくれる医科の先生と積極的に連携していきたいと考えています。
例えば、歯周病やう蝕(うしょく=むし歯のこと)の治療および予防という観点から、食生活改善の一つとして、糖質摂取量のコントロールが必要となる場合があります。しかし、患者さんが糖尿病で、血糖を下げる薬を飲んでいる場合、糖質摂取量のコントロールをすると、薬の作用で血糖値が下がり過ぎてしまい、場合によっては低血糖発作を起こしてしまう危険性もあります。そこで、血糖値を下げる薬の量を減らしたり、薬の種類を変えてもらうなど医師との連携が必要になる場合があります。また、患者さんの全身状態によっては糖質摂取量の制限ができないケースもあります。そういった場合なども含めて、医科と歯科の連携が重要であると思います。

医科との連携が大切な病気は、他にもありますか?

医科との連携が大切な症状に金属アレルギーがあります。一般的に知られている金属アレルギーの多くは接触性のもので、身に付けたアクセサリーや腕時計と接触したところが赤くなるような症状です。これは、見た目にも明らかで、その金属を使用したアクセサリー類を使用しないようにするだけで対処できます。
しかし、歯科用金属が原因の金属アレルギーは、口腔内の金属が接触している歯茎や粘膜にアレルギーの症状が出現するとは限らないのです。唾液中に溶け出した金属イオンが全身に回り、予想もつかないところでアレルギー症状が出現する可能性があります。アクセサリーも何もしていないのに、原因不明の皮膚症状や体の不調が起こる原因の一つに、歯科用金属が由来の金属アレルギーが関連している可能性もあります。

歯科の金属に対するアレルギーの治療はどのように進めていますか?

問診票にはアレルギーの有無を記載する欄がありますので、金属アレルギーがあるようなら、その金属の種類を尋ねます。明らかに歯科用金属の成分に金属アレルギーがある場合には、金属を使用しない治療法を提案します。金属の種類がはっきりしない場合には、医科との連携のもと、金属アレルギー検査の受診をお勧めしています。検査結果で歯科用金属にアレルギーがあった場合には、金属を使用しない治療法を提案します。健康保険でも、金属を使用しない治療が適応になる場合がありますが、この診断は医科で行う必要があります。

開院一年を過ぎて思うことは?

開院するにあたり、特に力を入れたことは清潔な治療環境です。治療器具の消毒をしっかりするのは当然のことですが、治療に使用する全ての機器から出てくる水を、単なる水道水ではなく除菌力のあるオゾン水にしたことです。このオゾン水除菌システムを導入したことによって、あくまでも体感ではありますが、治療成績が向上したように思います。その具体的な内容に関しましては、今後データをとって検証していく必要があると思います。
栄養や食事の話をすると「歯科でする話なの?」と思われる方がまだ多いかもしれません。口腔は消化管の一部です。消化がしっかりできていなければ、十分な栄養の吸収もできません。栄養が足りなければ、口腔の粘膜などにも症状が出てきます。それに対し、適切な食事や栄養素に関する指導を行うのは当然だと言えます。例えば口内炎ができたとします。これに対し、薬を出したり、レーザーを照射したりするのは対症療法です。口内炎の原因が栄養不足によるものなのか、細菌・外傷・その他の原因によるものなのかを特定し、栄養不足が原因であれば、栄養に関する指導をする必要があります。これが原因療法です。今後、私は原因療法と予防をより多くの人に知っていただくよう、さらに研鑽を積んでいきたいと思っています。

(取材日:平成29年4月10日)

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