眼科医から見た目薬のお話。「目薬ってなんでしょう?」

新川中央眼科
小川 佳一 院長
札幌市北区新川3条7丁目1-64 TEL 011-769-1010

目薬(点眼薬)というと、かゆみ止め、充血を取る、疲れを取る等々、何か調子が悪い時に適宜つけるお薬という認識をされている方が多いでようですが、目薬って実際はどんなものなのでしょうか。
今回は目薬について新川中央眼科 小川佳一院長に語っていただきました。
<取材協力>
小川 佳一 氏
(新川中央眼科 院長)
「メディカルページ平成26年度版」(平成26年8月1日発行)の冊子に掲載された記事です。

目薬というのは実際どんなものでしょうか?

眼科で処方される多くの点眼薬の主剤(薬として効かせたい成分)は、内科で出されている飲み薬(内服薬)と同じ成分です。たとえばアレルギー性結膜炎で処方するパタノール点眼薬ですが、内服薬ではアレロックです。
抗炎症薬の二フラン点眼液やプロラノン点眼液は、内服薬では名前も同じ二フランです。
もちろん抗生物質の点眼薬は、クラビット、ロメフロン、ベストロンなど内服薬で使われているものと同じです。
薬の成分を水に溶かして眼の表面から吸収できるようにしたものが点眼薬なのです。
内服薬は胃や腸の粘膜から吸収された後、血液に溶け込み全身に送られます。内服薬では飲んだ薬のうちほんのわずかしか眼に到達しません。
点眼薬で直接眼の表面に吸収される量を飲んで賄おうとすると大量の飲み薬が必要になりますね。眼に効かせたいお薬を眼から直接吸収させることは理にかなった投与方法なのです。

「とりあえずビール」「とりあえず目薬??」

外来をしていいると、患者様から「とりあえずつける目薬を下さい」と言われるのですが、内科でそういう要望は出しませんよね。
内科で「とりあえず飲んでおく飲み薬」が無いのと同じく、「とりあえずつけておく目薬」はありません。また、1日3回、食後と指示のある内服薬を調子悪いときだけ勝手に適宜飲むことはしませんよね。成分や目的が内服薬と一緒なのですから点眼薬も指示通り使用することが大事なのです。
ただ、困ったことにこの薬好きの日本人体質に迎合するように、我々医者も「とりあえず」出しておくということをしてきました。たいていは抗生物質の点眼です。戦後間もない衛生状態の悪かった時代の名残でしょうか?
現在、内科や小児科では抗生物質のお薬はあまり出されません。以前は風邪にも抗生物質の内服を出していました。風邪はウィルスが原因ですから、抗生物質は無効です。安易に抗生物質を連用することでMRSAなどの耐性菌が増え、実際に細菌感染が生じたときに効くお薬がなくなるからです。しかしなぜか点眼だけは、まだ「とりあえず」抗生物質なのです。困った風潮です。

市販の点眼薬

ところが市販の点眼薬は症状のある時に適宜つけるようになっています。なぜでしょうか?
点眼薬の効能を読んでみれば一目瞭然です。かゆみ、充血、痛み、目脂、疲れ、なんにでも効くことになっています。飲み薬でこんなに効能の多い薬見たことがありますか?頭の痛みもおなかの痛みも取って、咳を抑え、体の赤みも消える、そんなお薬は見たことがありませんね。市販の点眼薬は、とりあえずいろいろな成分をまぜこぜにして作っているからです。「なんにでも効くお薬」ということは「なんにも効かない」お薬という裏返しです。
特に問題なのが「充血を取る成分」です。これは血管収縮剤という成分です。病院では手術の時に止血薬として使っているお薬です。充血というのは目の表面の血管が拡張して太くなるため、血管の赤みが目立つ状態です。
原因は様々で、こすってもなりますし、コンタクト使用による酸素不足、細菌感染、アレルギー、傷、なんでも起きてきます。血管が拡張して血流を増やし、酸素や栄養をたくさん送れるようにしているのが充血です。
拡張した血管を強制的に細くすることで、見た目は赤みがなくなります。でも原因に対して作用しているわけではありませんので、その作用が切れた時に原因がまだ残っていたらリバウンドでさらに充血します。これを繰り返すと充血のしやすい目、もしくは常に充血のように見える目になってしまいます。
また、市販の点眼で求められているのは「すっきり感」です。メントール系の刺激でスーッとした感じを出すことで効いた感じを出します。フリスクや仁丹を飲んでいるのと同じです。
普通のお薬はそのまま水には溶けるものは多くありません。水に溶かすため他の薬剤を添加する必要があります。また、浸透圧やpHなどが涙と大きく違っていると「しみる」「痛い」といった刺激になりますので、調整するための成分が加わります。病院で処方される薬はメーカーが刺激が少なくなるように努力しています。ですから、「すっきり感」はないことが多いです。

点眼薬の使用期限

開封後の点眼薬にはっきりとした使用期限の取り決めはありませんが、おおむね1か月程度と思ってください。お薬は開封すると空気に触れ酸化します。錠剤をパッケージから出して裸のまま置いておくとよくないことは想像できますよね。パッケージから出して机の上に置きっぱなしの錠剤を飲みたいですか?
点眼薬も同じです。また、水分があるので細菌が繁殖することもあります。それを防ぐために防腐剤が入っているのですが、体に良い成分ではありません。できるだけ少なくしたいので、処方薬では最低限になるように調整されています。点眼薬は生ものですから、開封後は早めに使用し、古くなったら捨てるようにしてください。

◆寄稿:新川中央眼科 院長 小川佳一氏


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