ドクターに聞く「近視ってなに?」

toku05a_nuki新川中央眼科 
小川 佳一 院長
札幌市北区新川3条7丁目1-64 TEL 011-769-1010

普段よく耳にする「近視」や「遠視」。とても身近な病名ですが、実際に「近視ってなに?」と聞かれると、よく分からない方が多いのではないでしょうか。そこで、今回は、新川中央眼科 小川佳一院長に「近視」について、語っていただきました。
<取材協力>
小川 佳一 氏
(新川中央眼科 院長)

「メディカルページ平成23年度版」(平成23年8月10日発行)の冊子に掲載された記事です。

近視ってなに?

 

小川佳一 院長
■小川佳一院長

近視を理解する前に目の構造を知る必要があります。
目の構造はカメラと同じです。黒目(角膜)はカメラのフィルタとレンズ、白目(強膜)はカメラのボディーです。断面を見るとカメラのレンズに相当する水晶体、フィルムに相当する網膜があります。
一番リラックスした状態で遠くを見たときにピントが網膜に合っている人を正視といいます。これが眼鏡の要らない理想の状態です。ピントの位置が網膜より手前にある人を近視、後ろにある人を遠視といいます。よく近視は「目が悪い」、遠視は「目が良い」と言う人がいますが、遠視も近視もピントの位置がずれています。

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なぜ近視や遠視になるのでしょうか。

実はこれは目の奥行き、サイズの問題なのです。赤ちゃんの目の角膜と水晶体のサイズは大人とほぼ同じ大きさです。角膜からピントの位置までの距離は大人とあまり変わりません。ところが眼球のサイズそのものは小さいので、網膜よりはるか後方にピントがあることになります。ですから赤ちゃんの多くはかなり強い遠視です。
成長によって眼球が大きくなると網膜の位置は後ろにずれますが、ピントの位置は変わらないので遠視の量はどんどん減ってきます。いずれ正視になるのですが、さらに成長を続けてしまうと今度は近視になってしまいます。
toku05dですから近視や遠視は持って生まれたピントまでの距離(水晶体の性能)と目のサイズ(角膜から網膜までの距離)のバランスの問題で、これは足が小さいのに背が高いとか、肩幅が広いなどの体型の問題と一緒で「良い」とか「悪い」といったものではありません。
もうひとつ忘れてはならないのがピント合わせの問題です。今までの話はピント合わせをせずリラックスした状態で遠くを見た時の話ですが、近くを見ようとするとピントの位置は前のほうにずれてきます。(角膜とピントまでの距離が短くなる。)
遠視の人はピントが網膜の後ろにありますからピントの調節の能力を使って自力で網膜にピントを合わせることができます。一方近視の人はピント合わせの能力を使ってもピントの位置を後ろに下げることができないため自力でピントを合わせることができず、ピンボケ状態のままになります。眼鏡はこのピントの位置を後ろにずらすことでピントが合った状態を作ります。
このピントのずれを距離で評価するのがいわゆる近視の「度数」です。単位はD(ジオプター)で表します。

眼鏡をかけると近視は進みますか?

「眼鏡をかけると近視が進む」と思われている方が多いですが、これは誤解です。
成長期で眼球が大きくなると近視が進行します。眼鏡を掛けだす時期と成長期で近視が進む時期が重なるのでそういったイメージができてしまったのです。
基本的には眼鏡は「見えづらくて不便」であれば掛けるだけで十分です。
眼鏡をかけるタイミングとしては「教室の真ん中よりやや後ろで黒板の字が見えづらくなってきた時」「目を細めてみるようになった時」です。集中力が続かないため学業に影響したり、肩こり、頭痛が出るなど健康上良くないからです。

近視は治らない?

toku05e一時期、水晶体の屈折率が変化して近視になる屈折説がいわれた事もありますが、今では完全に否定されています。仮性近視と言う考え方も日本独自のものです。
眼球のサイズの問題ですので残念ながら近視が治ることはありません。大きくなった眼球は小さくできませんよね。
屈折説に基づいた「訓練で近視が治る」という広告を見かけることがありますが、訓練の前後で視力を測ります。何度も視力を測るうちに視力表を読む(勘で答える)のが上手になるだけです。ただのトリックに過ぎず日本以外ではほとんど行われていません。
近視の進行抑制については研究が進んでいて、世界的にはアトロピン点眼や累進焦点レンズの使用が行われていますが、十分な抑制効果とはいえないため、日本では一部の研究機関を除いて行われていません。
しかし正確な近視の度数は眼科で散瞳検査(目薬で瞳を開く検査)をしなければ測ることはできません。いきなり眼鏡を作らずに、まずはお近くの眼科専門医を受診して確認しましょう。

 

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