「虫歯と歯周病」について

clm_shika05docコラム投稿: 
おおの歯科クリニック 院長 大野 嗣月

はじめまして大野でございます。
今回は、歯を失う2大疾患である虫歯と歯周病を中心に説明したいと思います。

■8020運動

clm_shika05a聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、私達歯科医師は『8020(ハチマルニーマル)運動』ということをすすめています。これは80才になっても20本、もしくはそれ以上の歯を残しましょうということです。皆様には何本の歯がありますか?自分の歯が本当に大切なのは、歯を失ってから初めて理解される方が多いようです。いくら上手に入れ歯を作っても元々の自分の歯の方が全ての点でまさっているのは言うまでもありません。

■歯の喪失について

歯を失う大きな疾患として虫歯と歯周病(シソーノーロー)があります。虫歯も歯周病も放置しておくと最終的には歯を抜かざるをえなくなります。ともに早期発見・早期治療をすることにより歯の寿命は確実に長くなります。

■虫歯について

虫歯は、歯についたプラーク(口の中の細菌の集まり)が原因で細菌が砂糖をえさにして酸を出し歯を溶かします。砂糖は我々の体には必要なものですが、砂糖のとりすぎは虫歯の発生の手助けになるので、とりすぎには注意して下さい。おかし類・ケーキ・チョコレート・ジュース等、世の中には砂糖がたくさん入ったおいしくて危険な誘惑がたくさんあります。最近は、ノンシュガーやキシリトール入りのアメ・ガム等が増えてきています。砂糖が入っていなければ虫歯にはならないので、これらの物も有効に利用するといいでしょう。

■虫歯の治療について

虫歯は放置しておくと少しずつ大きくなってしまいます。残念ながら虫歯は自然に治ることはありませんので初期の状態で治療する必要があります。小さな虫歯なら歯を削る量も少しですみますし、白いコンポジットレジンなら見た目にもほとんどわかりません。このコンポジットレジンは、近年特に進歩した材料で、今までは小さな金属になっていた部位でも白くすることが可能になってきました。

■歯周病について

歯周病(シソーノーロー)は症状が出ずらく、進行すると歯が揺れてきて最終的には自然に抜けてしまう恐しい病気です。歯周病は、歯の周りについたプラーク(細菌の集まり~プラークがかたまると歯石)が原因で、まず歯のフチにプラークがついて、そのままにしておくと歯ぐきが赤くなりはれてきます(歯肉炎)。少し進行すると歯と歯ぐきの溝(歯周ポケット)が徐々に深くなり(歯ぐきが歯からはがれていく)、さらに歯ぐきがはれて出血しやすくなります(易出血性)。歯ぐきの溝が深くなると、その深い位置にプラークや歯石がつき、より歯ぐきの炎症が進み、歯の周りの歯を支えているあごの骨がとけていきます(骨吸収)。骨の吸収が進むと支えを失った歯は揺れてきて、物がうまくかめない、歯ぐきからうみが出る、出血する、口が臭い等の症状が出ます。ここまで進行しても痛みが伴わない場合も多く、放置しておくと歯は自然に抜けてしまいます。歯周病で歯が根元からとれて「歯がとれたのでつけてほしい」とその歯を持って来院された患者さんも実際にいたほどです。(残念ながら歯はつけれません)
このように異常を感じて来院された時点では、中程度以上に歯周病が進行しているケースがほとんどです。年齢的には20才前後からすべての方が歯周病になる可能性を持っています。

■歯周病の治療について

そこで歯周病も虫歯も予防が一番ということになります。積極的に歯科医院に行き、歯周病になる前に歯の掃除や歯ブラシの指導を受けるべきだと思います。
虫歯の場合は、ある程度までなら、つめたり、かぶせたりして、その機能を回復させることができますが、歯周病は歯を支えているあごの骨がなくなるのでたいへんです。歯周病も様々な治療方法がありますが、進行を止めて安定した状態にできたとしても、完全に元の健康な状態にまで回復させることはまだ不可能です。
歯周病の治療は、まず歯ぐきの検査をして、歯ブラシの方法を学び、歯の機械的な清掃(スケーリング)、少し歯周病が進んでいる場合はさらに深めの清掃(歯ぐきの中の歯石を取る)、さらに進行した歯周病では歯ぐきの手術となります。
治療のベースとなるのは、あくまでも患者さん本人の歯ブラシ(ブラッシング)であり、これが治療が成功する大きなキーポイントになります。

■歯ブラシ(ブラッシング)について

今まで説明してきた虫歯や歯周病はプラークという歯の周りについた汚れが原因で、そのプラークを歯ブラシで取りのぞいてあげればいいのです。
8020運動をすすめて、虫歯をつくらず、歯周病を防ぎ、口の中の健康を維持するためには家庭で行っていただくブラッシング(ホームケア)が一番大切だということです。歯ブラシでプラークは落とせます。(歯石は無理ですが)
当院では、ほぼ100%来院された患者さん1人1人に歯ブラシの指導を行っています。特に小児にはある程度上手にできるまで毎回歯ブラシの練習をします。歯ブラシが上手になれば、汚れも着きづらくなり、口の中の健康が維持されていきます。
ブラッシングというのは、とても威力のある事なのです。
大人の方には今さら歯ブラシ?と思う人がいるかもしれませんが、何才になっても遅い事はありません。歯ブラシが上手になってこれからの自分に不利益なことは1つもないのですから。

■メインテナンスについて

歯の治療が終了した後、大切なのは、痛み等がなくても定期的に歯科を受診して口の中の検査と歯の清掃をしてもらうメインテナンスです。
おおむね半年に1回の検査と清掃をおすすめいたします。いくら歯ブラシが上手になっても、少しずつ、プラークや歯石、着色等が歯についてくるものです。虫歯や歯周病に進行しないうちに機械的な清掃を受けましょう。

■最後に

おおまかではありますが、虫歯と歯周病を中心に大切なのは「歯ブラシ」という説明をさせていただきました。
歯科の治療は痛い、怖いというイメージがある方がほとんどだと思いますが、今は治療方法、材料等多くの進歩が見られます。注射にしても、最近では痛くなかったと言ってもらえる事が多くなりました。
皆様には自分の健康は自分で守る強い意志を持っていただき、一生涯口の中の健康を良好に保つために積極的に歯科を利用していただければ幸いです。

大野 嗣月


おおの歯科クリニック
歯科・小児歯科、矯正歯科、歯科口腔外科
札幌市東区北21条東20丁目3-17 TEL 011-784-4618
開業/平成3年
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